H.SELMER Signature Stencil (1900~1910)

ヘンリー・セルマーがいつサクソフォン製造に乗り出したのか正確には分かっていませんが、「H. Selmer」の名を冠した最初のサクソフォンは、1904年のセントルイス万国博覧会(ルイジアナ購入博)前後に製造された可能性が高いとされています。

ジョージ・バンディの書き残した回想によれば、これら初期のセルマー・サクソフォンはアドルフ・サックス・ジュニア(アドルフ・エドゥアール・サックス、1859–1945)との協力によって製造されたものでした。これらは、サックスがパリのブランシュ通り51番地に構えていた工場で製造されたスタンシル・ホーン(OEM製品)でした。この工場は1895年から1907年まで稼働しており、1907年以降、サックス・ジュニアは工場をパリのミラ通り84番地へ移転しました。

初期のサックス製スタンシル・セルマー・パリ・サクソフォンを並べて比較すると、それらは当時アドルフ・サックス・ジュニアが製造していた楽器とまったく同一であることが分かります。「似ている」のではなく、「完全に同じ」なのです。キイガードからベルと本体をつなぐ支柱まで、唯一の違いはベルに刻印されている名前だけです。

これらのサクソフォンは最低音がBまでしか出せませんでした。古い形式のダブル・オクターブ・メカニズムをまだ採用しており、ローラー類も一切なく、キータッチ部分もすべて金属でした。

とはいえ、これらの楽器はアドルフ・サックスによるオリジナル設計に比べて、2つの大きな改良点がありました。第一に、上部と下部のスタック(キイ機構)がそれぞれ1本のロッドで支えられており、スタックのポスト(支柱)が一直線に並ぶことで、リブ構造による取り付けが可能になっていました(従来のようにボディチューブに直接はんだ付けする必要がありませんでした)。第二に、サイドCキイが追加されたことで、サイドキイが3つ備わるようになっていた点です。

 

出典:Saxophone Museum